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胸骨変形防止装具が掲載されました
2024-07-08
胸骨変形防止装具が「胸骨正中切開による心臓手術後の乳幼児に発生する二次性鳩胸に対する圧迫矯正装具治療」としてGeneral Thoracic and Cardiovascular Surgery GTCS(日本胸部外科学会の英文雑誌)に掲載されました。
大阪医科薬科大学病院 小児心臓血管外科 小西隼人医師の論文が
「胸骨正中切開による心臓手術後の乳幼児に発生する二次性鳩胸に対する圧迫矯正装具治療」としてGeneral Thoracic and Cardiovascular Surgery GTCS(日本胸部外科学会の英文雑誌)に掲載されました。
<論文のまとめ>
《考察》
本研究では、胸骨の前方突出の角度を直接測定することで、装具装着開始時の胸骨突出の重症度と装具療法による突出角度の変化率との関連を恣意的ではない方法で合理的に比較可能な2群に分けることができた。そして、2つの装具装着に対する反応の群間比較により、装具に対する反応不良に影響するオッズ比の高い因子は男児、重症心奇形、複雑な心臓手術手技であることが判明した。
従来原発性鳩胸では、胸郭変形の主観的な視覚的印象や胸郭の前後と左右径の比で突出を評価する方法が報告されているが、本研究では圧迫装具の治療対象となる変形の角度を直接的に測定することで効果を判定した。原発性鳩胸の効果成功率は70%以上とも報告されている一方で、本装具による二次性鳩胸の改善率は58.8%と低いものであった。これは原発性鳩胸への装具よりも低い圧迫圧設定であったことや比較的多くの自己中断例の発生が効果に影響が及んだ可能性がある。装具装着遵守だけでなく、装具の予防的使用を含めた、より良い装具の性能や短期間での効果を目指すプロトコール改良を考慮する必要があると考えられた。
《結論》
我々が新たに開発した圧迫矯正装具は、胸骨正中切開による心臓手術を受けた乳幼児の二次性鳩胸における胸骨突出の軽減に一定の効果を示した。また、2つの異なる変形角度により分けた群間比較により、装具に対する反応不良に影響する因子を抽出することができた。これらの知見は、今後二次性鳩胸に対する自然歴や装具の有無による比較試験を行うことによって確認することが不可欠と考えられ、更なる研究が必要であった。
私どもが長年研究開発してきました胸骨変形防止装具が、少しでも皆様のお役に立てたことを誇りに思い、これからも一層の努力を重ねてまいります。
胸骨変形防止装具に関してご質問などございましたら、
永野義肢のホームページwww.naganogishi.jp からお電話またはメールにてお気軽にお問い合わせください。
(電話でのお問い合わせは、平日9:00~17:30 土・日・祝日・夏季休業、年末年始を除く)
General Thoracic and Cardiovascular Surgery GTCS(日本胸部外科学会の英文雑誌)に掲載された論文は以下のとおり
<研究内容全体の要約>
乳幼児期に胸骨正中切開を伴う心臓手術を行った患児では、術後に胸骨尾側が突出する二次性鳩胸がしばしば発生する。発生機序は不明で、原発性鳩胸と異なり自然歴や治療報告も見られていないのが現状である。従来の原発性鳩胸に使用される装具は青年期使用であり、乳幼児には使用可能ではない。そこで、当院胸部外科教室、当院整形外科教室と有限会社 永野義肢との産学連携により「突出した胸骨部位のみを圧迫することで加療する圧迫矯正装具」を開発し、臨床研究を開始した。
新規開発装具はポリプロピレン製の軽量で変形しにくい外郭とし、伸縮性ベルクロに連結したパッドにより突出した胸骨の部分のみに圧力が加わる設計とした。圧迫圧は手術創の損傷や褥瘡を防ぐように携帯型センサーで30~40mmHgになるように調整し、外郭の内側は通気性の高い軽量弾力性繊維クッションで覆った構造とした。
新規開発した装具に対する変形角度の反応を後方視的に評価し、その装具に対する反応に影響を及ぼした因子を検討した。装具希望と同意のあった患児より装着を開始、胸部側面X線による突出した鳩胸の直接測定を6~12ヶ月毎に行い、角度の記録を蓄積。圧迫圧測定や装着時間や快適性の問診も行った。各データより角度変化に影響を与える因子を抽出するための比較として「装具装着時の角度」と「装具装着後の変形角度の変化率」の関係を線形回帰によって推定し、得られた値から残差を算出し、残差正のG群(良好な反応群)と残差負のP群(不良な反応群)に分けた。患者背景や、装具の使用状況から要素を抽出し統計学的検討を行った。
2013年5月から2022年11月までの51例で評価を行った。G群:P群=30例:21例。角度の変化率は、G群:P群=10.5 ± 7.1%:-2.9 ± 6.2%(p<0.0001)。男児(p=0.048)、重症心奇形(p=0.024)、複雑な心臓手術(p=0.013)、複数回の胸骨切開(p=0.025)、装具装着期間(p=0.046)、装具の自己中断(p=0.045)が装具装着の反応不良と関連する因子であった。
新規開発した圧迫型装具は、二次性鳩胸の変形改善に一定の効果を示した。加えて装具に影響与える可能性のある因子の同定ができ、今後の比較試験も計画可能であった。
<論文のまとめ>
《考察》
本研究では、胸骨の前方突出の角度を直接測定することで、装具装着開始時の胸骨突出の重症度と装具療法による突出角度の変化率との関連を恣意的ではない方法で合理的に比較可能な2群に分けることができた。そして、2つの装具装着に対する反応の群間比較により、装具に対する反応不良に影響するオッズ比の高い因子は男児、重症心奇形、複雑な心臓手術手技であることが判明した。
従来原発性鳩胸では、胸郭変形の主観的な視覚的印象や胸郭の前後と左右径の比で突出を評価する方法が報告されているが、本研究では圧迫装具の治療対象となる変形の角度を直接的に測定することで効果を判定した。原発性鳩胸の効果成功率は70%以上とも報告されている一方で、本装具による二次性鳩胸の改善率は58.8%と低いものであった。これは原発性鳩胸への装具よりも低い圧迫圧設定であったことや比較的多くの自己中断例の発生が効果に影響が及んだ可能性がある。装具装着遵守だけでなく、装具の予防的使用を含めた、より良い装具の性能や短期間での効果を目指すプロトコール改良を考慮する必要があると考えられた。
《結論》
我々が新たに開発した圧迫矯正装具は、胸骨正中切開による心臓手術を受けた乳幼児の二次性鳩胸における胸骨突出の軽減に一定の効果を示した。また、2つの異なる変形角度により分けた群間比較により、装具に対する反応不良に影響する因子を抽出することができた。これらの知見は、今後二次性鳩胸に対する自然歴や装具の有無による比較試験を行うことによって確認することが不可欠と考えられ、更なる研究が必要であった。